シングルカットされた「風立ちぬ」や「白いパラソル」は、松田聖子に興味がないという人でも聞いたことくらいはあると思う。
そんな人も、一度だまされたと思ってアルバムを聞いていただきたい。
当時、日本のミュージックシーンで考えうる最高のブレインを集めて、表現力に長けたアイドルをプロデュースするとこうなる、という見本だ。
それまではアイドル歌手の歌に質を求める声はなかったが、このアルバム以降、ただかわいくて歌がそこそこ上手いだけでは評価されない時代になっていく。
楽曲のレベルが高いのは尤もだとして、やはり松田聖子の歌唱力に聞き入ってしまう。
彼女は大瀧詠一以外にも呉田軽穂(松任谷由実)、財津和夫、細野晴臣、佐野元春、尾崎亜美などの楽曲提供を受けているが、やはりその後作曲した本人によるセルフカバーよりも断然に出来がいい。
何だかんだと紆余曲折があった彼女だが、時代を築いたアイドルとしては最後のアイドルではなかったか。
当時に多感な時期を過ごした人たちには、何かしら記憶にリンクする歌声を持った人である。