Bye Bye 「かんてら」

SIGMA DP2 Merill

名古屋駅前にある古いビルディングが、また一つ姿を消します。
大名古屋ビルヂング。
ビルヂングという呼び名は三菱地所の建物に見られるもので、竣工は 1965 年と言いますから僕と同級生ですね。
駅前辺りは再開発の波が著しい地域で、ミッドランドタワー、JR ツインタワー、スパイラルタワー、ルーセントタワーと高層ビルが目白押しです。
駅前ロータリーに面する大名古屋ビルヂングも、それらの新しいビルに比べると旧態依然としているのは否めない事実で、2009 年に隣接するホテルと一体になった建替え計画が発表されました。
本年度が着工となっていて、このビルで営業していた店が次々に閉店していきます。
これらの写真にあるのは、地下街にある「かんてら」という喫茶店、最終営業の 2 日間を撮ったものだそうです。

この小さな写真集は先般の “SOCIAL TOWER MARKET” で手に入れたもの。
一度は通り過ぎたのですが、どうしても気になって戻って購入しました。
と言うのも、この「かんてら」には何度となく足を運んだことがあるからです。

男性は「馴染みの店」を作りたがりますね。
だから積極的に新しい店を開拓しようとはしない。そっちの方はやはり女性が長けているのでしょう。
一度馴染みになると、もうそこばかりに通います。
わざわざ遠回りになっても、そっちの方が高くついたとしても。
冷静に考えればバカバカしいのかも知れませんが、そこで過ごす時間はとても大切な時間なわけです。
ま、Priceless とでも言うんでしょうか ( 笑 )

この「かんてら」は馴染みまでは行きませんでした。
でも駅前でちょっと一服したいな、と思う時には必ず訪れる店ではありました。
決して静かな店、という訳ではありません。
場所柄サラリーマンが休憩やランチ後のコーヒータイムに立ち寄ることが多いので、どうしても店が始終ざわついています。
でも、そんな喧噪が好きだったんですね。
地下街では珍しくタバコが吸えるのもポイントでした。

新しいものを作るのに古いものを壊さなくてはならない。
これは摂理であって、致し方ないことでしょう。
こういう店があそこにあって、あの頃には誰々とよく通った。
それはここに通った人たちそれぞれの記憶にしか残りません。
店主の方の思いは分かりませんが、それは圧倒的な存在感ではないでしょうか。

古いものを残してほしい、と言うようなことを書くつもりはありません。
人の営みは破壊と建設を繰り返すことに他ならないからです。

僕は僕の歴史の一部として、この小さな写真集を時々取り出して、歴史を振り返ってみたいと思うのです。
さよなら「かんてら」