幸福な朴念仁

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僕はボクネンジンなので、レンズの善し悪しが本当に分からない。
大体食物の味からしてそうだ。
そりゃあ、辛い甘いや苦いくらいの判断はつくが、対価を支払う食物に於いて、今までの人生でこれは不味くて食えないというシロモノに出会ったことがない。
元より好き嫌いがないので、これは両親に感謝すべきだが、世にいう「食通」の人たちのような「何処其処の某という蕎麦が美味い」だとか「何々は某に限る」といった蘊蓄がない。
別段なくたって困りゃしないし、知人同士で何かを食べようとなっても、そういう場面でちゃんと知識を発揮する人がいるので、単純に役割として僕は食に関しての知識を要求されることはない。

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レンズに関しても同様なのだ。
僕に分かることといえばズームのワイド端は樽型歪曲収差が出やすいとか、そんな程度だ。
トイカメラのプラスティックレンズでも(結構写るじゃないか)と喜んだりするので、大凡その浅はかさが分かろうというものだ。
むろん使ってもみない内からああだこうだというのは失礼千万、一通りは自腹を切った。
その結論が「僕にはレンズの善し悪しは分からない」ということだ。

数値に置き換えての性能比較なら理解できる。
だが、レンズの達人たちは「レンズ性能は数値だけでは計れない」という。
これはもう、そういった分野を語れる人たちには天賦の才があるのだとしか思えない。
そういった資質に恵まれた人たちのみが語れる分野なのだ。
そうなれば僕のようなボクネンジンの出る幕はない。
つまりは僕なんぞジャンクワゴンで500円程度で転がっているレンズで十分であるという話だ。
それが証拠に、食事に関しても一回で何千円、何万円もする豪勢な食事でも250円で買える激安弁当でも、何ら変わることなく美味しくいただける。

と、ここまで書いて思う。
僕はとても仕合せなのかもしれない、と。